ペンギン先生の
「英語がよくわかる話」
|
|
<第13回> |
By
Shuichi Motoki |
3つの S
個の文化を感じる S
: 今日は S についてお話するよ。
: S って? どいうことなの?
: 英語を習い始めたときに厄介なのがSなんだ。
日本語の世界になれきっていて、日本語以外言葉を知らないという環境
だから、文化の背景が違っているところからでてくる発想というのは
初め誰でも戸惑うものなんだ。
: それが Sなの?
: そう。他にもあるけれど、今日はSについて言いたい。
例えばね、
I play tennis.
Tom plays tennis.
He plays baseball, too.
Sue plays tennis
ほら Sがでてくるだろ。play にs
がついてる。
英語はね、自分と他者一人と完全に区別するんだ。
不思議なほどにね。別に Tom play
tennis. でいいだろう、とだれでも思
うはずなんだ。
: そんな疑問すら浮かばなかったなあ。そういえばそうだよね。
「三人称単数・現在形」って習ったよね。
: そうだよね。今でもそんな風に教えているのかなあ。
それよりも、自分と話し相手(you
だよね)以外の人について話す時は
動詞にs をつけるのが鉄則なんだ。個人ひとりについて言っているのか
いないのか、意識するんだね。はっきり区別している。区別というよりも
合図をだして「第三者の個人のことを言ってるよ」と言っているんだ。
これほど第三者に
s をつけてこだわるのはそれなりの理由がありそうだ。
どう思う?
: ええ・・・。なんでだろう。ここにいない個人のことを話しているのだから、
いない人をたててるのかな。
: おお、するどい。いい線だ。
たててるのか、見下げているのか、それはわかないけれど。確かに言える
のは第三者の個人は対等である、それとそれゆえの距離感だね。それが
基本姿勢なんだ。
英語はその点はわきまえるんだね。はっきり区別する。そうすることに
よって人は平等なんだ、という考え方だね。自分も他人もいっしょくたに
しない。個として言語としても自立させる。距離感をもつ。
日本人が「彼」という言葉を使うようになったのは明治に入ってからだ。
この第三者を表す代名詞というのは、ほら日本の小学生もまだ「彼」は
使えない。この言葉を使うようになるにはまだ時間がかかる。「花子ちゃん」
というほうがなんとなく親しみやすいよね。それを「彼女」というとちょっと
距離をおいて客観視しているようなところがあるよね。だから英語の
「he=彼」も s
も感じとしては日本語の「太郎君」よりも距離感が違う。
ベタベタしていないところがある。 まあ、sはそんなことを含んだ文字だね。
: へえ、sにそんな深い理由があるのかあ。
: 「彼や彼女」という言葉は新しい言葉だと思うよ。中学生でも日常は使わ
ないよね。時間がかかる。歴史上でもこの言葉を使うようになるまで時間が
かかったはずだ。でなければ相当人間について考えられたはずだ。
s も同じだね。セットになってる。
だから、第三者の個人を話題にするときは s を忘れない。
これは礼儀みたいなもんだから。
もうひとつ S は ふたつ以上の名詞につける。
: a
pen pens というふうにでしょ。
: そうそう。1つか2つ以上かはきっちり区別をする。これも不思議だね。
: まだあるよ。
hers, theirs, its, ours, yours
なんかもそうでしょ。「〜のもの」
.
自分のものか他人のものか、だれの物かというときも mine
をのぞいては
みんな s で終わるね。
ここで結論だ。英語が今の英語になっていく途中「自分と他人、
1コと2コ以上、だれのものか」という観念がとても強く働いた時期が
あったんだろうね。そこに共通してみえるのは「個」ということだ。
人間は「個」と「個」の結びつきだ。その意識の高さが言葉に表れているね。
s は 英語ではたいへんなキーワードだからね。
今日はちょっと文化の話になっちゃったね。でも英語を学習する上で通過
しなければならないところなんだ。
なんとなく主語が三人称単数の時には動詞に
s をつける、なんておぼえて
もそれは理解にはならないね。
だから S
の使い方は中学1年生で習うけど、一番躓くところだね。
アザラシ君もきちんと理由を習っていたら躓かなかったと思うよ。
|