Key Sentences (こころに残る世界のことば)   -Page 60-

こころに残る名文・名文句をちょっとずつ紹介します。
KEY SENTENCE のところを読んでみましょう。

 

(KEY SENTENCE)


Something waits beneath it.


その下で待つものがある。



"I prefer winter and fall, when you feel the bone structure in the landscape - the loneliness of it - the dead feeling of winter.
Something waits beneath it - the whole story doesn't show."

(Andrew Wyeth)






<訳>

私は冬と秋が好きです。風景の骨組みを感じ、孤独であること、冬の不毛の感覚を味わうからです。でも、その下で待つものがある。物語の全体が現れているわけではないのです。

(アンドリュー・ワイエス)




凍えそうな空中にむき出しの梢をさらしている木立を目にすると、一瞬冷え冷えとなる。が、同時に、余分なものを削ぎ落としてすっくと立つその姿にどこか打たれもする。この死んだような風景がやがて少しずつ生き返ってくる・・・。その奇跡のような出来事に向かって自然は今も準備を怠っていないのだろう。冬の風景に込められた自然の強さ、潔さ、正直さに思いを巡らせていると、この文句が浮かんできた。言葉の主であるワイエスはアメリカン・リアリズムを代表する画家で、この言葉は自身の作品に添えられたものだ。農村とそこで生きる人々、何でもない物置小屋や農具といった、いわばアメリカの原風景を描き続けた画家は奇しくもこの1月16日に91歳で世を去った。「待っている何か」は『希望』というものかもしれない。